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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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童話「ベラのペンダント」15

童話「ベラのペンダント」15です。

良かったら、最初から読んでみてくださいね。

童話「ベラのペンダント」1・2です。

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ベラが王女ロザリーの学友として一緒に楽しく学んだり遊んだりしてる一方で、

ユリウスは王妃に復讐する手立てはないかと探っていた。

でも、ベラが王の娘だと知られないようにもしないといけない。

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王妃は身分の低い貴族の娘が王女の学友になったことも承服しかねていたし、

ロザリーがベラと親しくなり、王がそれを温かく見守ってることも許せなかった。

自分だけ蚊帳の外に置かれたような気分なのだ。

それになぜかベラが、あの憎いライザに見えてくることがある。

王の心を奪い、子どもまで宿したライザに似ているのか。

とっくにこの世から葬り去ったはずなのに、心には澱のように沈んで残ってる。

崖まで追い詰め、谷底の川に転落したのに、遺体は上がってこなかったという報告だった。

死んだはずだとは思うが、まさか生きてるなんてことはないだろうな。

ロザリーと同じくらいの年のベラがライザのはずがないし、もしかしたらライザの娘?

他人のそら似ということもありうる。王がベラを気に入ってるのもライザに似ているからかも。

それにしても気になる。やはり調べさせよう。


人を使って調べさせたが、スコッチ家の娘はもうとっくに亡くなっていた。

ベラはその代わりの養女なのだ。だが、どこから養女に入ったかはわからない。

それはスコッチ家の秘密らしい。秘密にするくらいだから、やっぱり怪しい。

もしかしたら、ライザが親しかった聖マリア教会のテレサからでは? 

でもたしか当時調べさせたら、そんな子どもは教会に居なかったはず。

おかしい。胸騒ぎが止まらない。私の勘に間違ったためしはない。

ライザの時も、妊娠に気づいたのは王よりも私の方が早かったのだ。

だからこそ、王に秘密でライザを始末できた。

ライザは自分から女官を辞め、子どもを産んでいたのに、なぜ王に言わなかったのか。

その子どもはどこにやったのだろう。母子共々殺してしまえと命じたのに見逃したのか。

子どもは見当たらなかったとの報告だったが、どこまで信じていいか分からない。

誰も信じられない。自分さえも。手を汚さないまでもライザを殺した。

我ながら残酷だったとは思うが、それは王とライザが私をそうさせたのだ。

あれからしばらくして生まれたロザリー。贖罪のように慈しんで育てた。

おかげでロザリーは心優しく成長した。王だって見守ってくれていた。

それなのに、そこへベラが入り込んできた。それもライザ似の身分の低い娘。

ライザは私付きの女官だった。よく気が付くから、可愛がってやったのに、

恩を仇で返したのだ。私の元を訪れる王に色目を使って誘惑したのだろう。

嫁いできたばかりの私は王にどう接していいか分からず、プライドばかり高い

つんけんとした女と思われていたにちがいない。それに比べ、ライザは

細やかな神経で私の世話だけでなく、王の世話までかいがいしくしたのだ。

王付きの女官もいるというのに、それを差し置いておそばに侍ったりしていた。

ライザを気に入った王が呼んだということもあるが、図々しいにもほどがある。

いつそんな関係になったかはわからないが、そうなってもおかしくない状況だったのに、

しばらく放っておいた私がいけないのか。気づいたときにはもうお腹に子どもが居たのだ。

私が気づいたことを悟ったライザはすぐに「里の母が病気だから」と言って女官を辞めてしまった。

探させたが、実家には帰っていなかった。もちろん母親も病気などではない。私に殺されるとでも思ったのか。

その時はそこまで思ってなかったのに。子どもの居ない私が育てようかとも思ったのだ。

嫉妬に狂う姿など王には見せたくない。そんなみっともないことをするくらいなら死んだ方がましだ。

それでも、やはりライザが許せなかった。私には心を許さない王が、なぜライザには心を開く?

私を抱かないでライザを抱いてた王。そのくせライザが女官を辞めたら、

嘆いてはいたものの、しばらくすると私を抱いてロザリーをもうけた。

まあそれ以来、私に触れようとはしないが。王子を産まないといけないのに・・・

王もライザを探していたはずだが、私の方が早く探し出し、殺すことができたのだ。

そう、ライザを殺したはず。そうでなければこの苦しみはなんのためなのか。

ベラも殺してやろうか。だがまだライザの娘と決まったわけではない。

それでもライザに似てる娘が、王やロザリーのそばをうろついてるだけでも許せないのだ。

勘にさわってイライラする。見るのも嫌だ。だからロザリーさえも避けてしまう。

もれなくベラが付いてくるから。学友とはいえ、母親よりもそばにいるとは何事か。

そろそろロザリーも親離れして、反抗期に入る年頃かもしれないが、

この前まで私に甘えていたのに、急に手のひらを返したように冷たい。

王には反抗しないくせに、私には生意気な口をきく。

娘は母親に厳しいというが、ベラが来てからいっそう酷い気がする。

私だけ仲間外れにされてるような疎外感。孤独を感じる。

ベラを殺しても、それが露見したら、ロザリーにも王にも恨まれるだろう。

ライザを殺したことも王はわかってるのかもしれない。

ベラが現れてから、ますます冷たくなったような気がする。

もともと冷え切った夫婦だが、ロザリーのことだけは話し合ってきたのに。

やはりベラがライザの娘で、ライザを私が殺したことも王に告げ口したのかもしれない。

そう思うと居てもたってもいられない。疑心暗鬼で苦しくなる。

相談する相手も居ない。女官も、信用して心許せるものは居ないのだ。

ライザや王に裏切られてからは、もう誰も信用できない。

自分も信じられないなら、せめて神でも信じればいいのかもしれないが、

神にすがるなんて悔しい。こんな目に遭わせたのは何よりも神ではないか。

可愛いロザリーまで母である私をないがしろにする。

夫たる王が冷たいとはいえ、離婚などできるはずもない。

王妃と奉られていても、所詮は王の妻というだけのこと。

それでも王にしがみつくほかないのだ。

私はこの牢獄から逃れることはできないのか。

この心の地獄から逃げ出すには、やはりベラをどうにかすることしかないのかも。

ライザを殺して一時的な心の平安を得たように。

たとえ、そのあと自戒の念に苦しもうとも。

(続き)



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